硝子体注射(抗VEGF治療)

VEGF

硝子体注射(抗VEGF治療)について

抗VEGF薬を用いた硝子体注射療法は、網膜の血流障害に起因する新生血管の形成と、それに伴う出血や浮腫の悪循環を断ち切ることを目的とした治療法です。新生血管の成長には、VEGF(血管内皮増殖因子)が重要な役割を果たしています。
硝子体内に直接注射された抗VEGF薬は、VEGFの作用を抑制することで病状の進行を抑制します。点眼薬や内服薬と比べ、高い治療効果と低い副作用リスクが特徴です。

抗VEGF物質の役割

  • Effect1網膜の血管から漏れ出た血液成分を抑制し、黄斑部の浮腫を軽減する働きがあります。

    → 糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの疾患において、視力の維持・改善が期待できます。

  • Effect2異常な新生血管の成長を抑制し、それに伴う滲出液や出血を防ぐ効果も持っています。

    → 加齢黄斑変性や病的近視など、脈絡膜新生血管が関与する疾患の治療に特に有効です。

硝子体注射(抗VEGF治療)の対象疾患

  • 加齢黄斑変性

    加齢に伴って黄斑部に変性が起こり、視力の中心がぼやけたり失われたりする病気です。最も一般的な失明の原因の一つです。

  • 糖尿病網膜症

    長期間の高血糖が網膜の血管を傷つけ、視力を損なう病気です。進行すると失明の原因となることがあります。

  • 網膜静脈閉塞症

    網膜静脈閉塞症は、網膜内の静脈が詰まり、血流が滞ることで発症します。血液の供給が不十分になると、網膜の機能が低下し、視界のぼやけや視力低下といった症状が現れます。

  • 強度近視(病的近視)

    眼軸が長くなり、網膜や視神経に負担がかかることで、後天的に視力が低下する可能性がある病態です。

硝子体注射(抗VEGF治療)のスケジュール

抗VEGF療法は、初回注射後に定期的な経過観察を行いながら、適切な間隔で注射を継続していくのが一般的です。導入期の3ヶ月間は、病状の改善と安定化を目指して集中的に治療を行います。
維持期に入ると、患者様の反応や疾患の特性に応じて、注射の間隔を調整していきます。治療の継続期間は疾患により異なりますが、定期的な通院と注射が必要不可欠です。

硝子体注射(抗VEGF治療)の流れ

  1. Flow01

    診察

    硝子体注射が必要と判断された場合、現在の病状や治療方法について、患者様にわかりやすくご説明いたします。注射の目的や効果、リスクなどについて、十分にご理解いただけるよう努めます。

  2. Flow02

    事前準備

    硝子体注射を受ける際は、事前の準備が重要です。特に、感染予防のために、注射の3日前から抗生物質の点眼を開始していただきます。

  3. Flow03

    硝子体注射

    点眼麻酔を行い、目の周囲や眼球表面を消毒し、無菌状態を作ります。そして、専用の注射器を用いて、抗VEGF薬を眼球の一定の位置から硝子体内に注入するのが基本的な流れです。注射自体の所要時間は1分程度です。

  4. Flow04

    術後の点眼

    硝子体注射後は、感染予防のために、抗生物質の点眼を続ける必要があります。通常、注射後3日間は、1日3回の点眼が必要です。

  5. Flow05

    定期健診

    注射後は、主治医の指示に従って、定期的に受診してください。検診では、視力検査や眼圧測定などを行い、治療の効果や副作用の有無を確認します。

硝子体注射(抗VEGF治療)の注意点・副作用

  • 硝子体注射を受ける際は、感染予防のために、治療予定の3日前から処方された抗菌薬を自宅で点眼してください。
  • 硝子体注射では、眼内に直接薬剤を投与します。その際、細菌などが眼内に侵入し、重篤な感染症を引き起こす危険性があります。特に、注射後の数日間は、眼内炎の発症リスクが高くなります。眼の痛みや視力低下、眼脂の増加などの症状が現れたら、速やかに医療機関を受診してください。
  • 国内外臨床試験で、脳卒中が報告されています。以前に、脳卒中又は一過性脳虚血発作を起こしたことのある方は、医師にお知らせください。
  • 硝子体注射では、眼内炎や脳卒中以外にも、様々な合併症が起こる可能性があります。白内障の進行、網膜剥離、網膜色素上皮裂孔などです。

硝子体注射(VEGF治療)の費用

1割負担(1回)
約15,000円
3割負担(1回)
約45,000円

高額療養費制度

高額療養費制度が適応される場合がありますので、詳しくは受付までお問い合わせください。